【第21回】どこまでが通常損耗なの?フローリング編1

はじめに

退去時の費用負担の一般原則として、

  1. 経年劣化及び通常の使用による住宅の損耗等の復旧については、賃貸人の費用負担で行い、賃借人はその費用を負担しない
  2. 賃借人の故意・過失や通常の使用方法に反する使用など賃借人の責めに帰すべき事由による住宅の損耗等があれば、賃借人はその復旧費用を負担する

とされています。

では、「経年劣化及び通常の使用による住宅の損耗」とは、どの程度の損耗なのでしょうか。

それは部位によっても異なってくると思います。

例えば、フローリングについては、実際に裁判でどのように判断されているのでしょうか。

そこで、調べてみました。

大阪高判平成16年7月30日

この裁判では、

通常損耗補修特約(通常損耗分に関する修繕費用を含めた原状回復義務を賃借人に負担させることを内容とする特約)

などをめぐり、賃貸人と賃借人で争いました。

本判決についても、私Hayatoが、以降の章で、個人的に判決文について抜粋・整理してみました。

裁判所の判断

  • 諸事情をもとに検討した結果、通常損耗部分の修繕費用を賃借人に負担させる特約は、公序良俗に違反し無効になるというべきである。
  • 具体的原状回復費用の算定にあたって、裁判所は以下の考え方を示しています。

清潔志向の高まりなどを考えると、壁・床・天井面仕上材の部分的な汚損であっても、実際に新たにその居室を賃貸するについては、壁等の仕上材全体の張替えを行う必要があると考えられる。しかし、それは新たな賃貸のために生じるものであって、本来的には賃貸人が負担すべきものであるから、そのための費用をそのまますべて賃借人に負担させることは許されない。賃借人の負担とするのは、実際の補修費用のうち、最小限度の補修に必要な範囲に限るべきである。

  • 本事案では、台所や居間の床フローリングについて、以下のように判断しています。
床フローリングについては、キズが七箇所見られるが、日常の使用により床にキズが入るのはやむを得ない面があり、キズの程度も明らかでない。よって、賃貸人はその費用にあたる○○円を返還すべきである。
床フローリングについて、「日常の使用により床にキズが入るのはやむを得ない面があり」と述べています。

個人的な見解

本判例からの個人的な見解です。

日常生活により床フローリングに傷が入るのはやむを得ない面があり、傷の内容・程度、傷の数、入居期間などにもよるが、一定の範囲の傷は通常損耗に含まれる、場合がある。