【第36回】認める・否認・不知とは(2)

はじめに

以前のブログからの続きです。

裁判官が原告に説明していた、「認める・否認・不知」とはどういうことなのでしょうか。

そこで調べてみました。

認める・否認・不知について

認める」とは、個々の事実について認めることです。

認めた事実については、証明することを要しない事実となるようです。

民事訴訟法

第179条

裁判所において当事者が自白した事実及び顕著な事実は、証明することを要しない。

否認」とは、「認める」の反対で、個々の事実について否定することです。

不知」とは、これも個々の事実についてですが、そのようなことがあったかどうか知らない、ということです。

「不知」は「否認」と同じ効果となりますが、「否認」が積極的に相手方の言うことは事実ではない、と言い切るものであるのに対して、「不知」は自分はそのことに関係していないから、あったというなら証拠を出してくれ、という意味のようです。

民事訴訟法

第159条

2.相手方の主張した事実を知らない旨の陳述をした者は、その事実を争ったものと推定する。

沈黙」(沈黙して答えない)は、「認める」場合と同じに扱われるようです。

書面で争う旨の言及をしない場合も同じです。

民事訴訟法

第159条

1.当事者が口頭弁論において相手方の主張した事実を争うことを明らかにしない場合には、その事実を自白したものとみなす。ただし、弁論の全趣旨により、その事実を争ったものと認めるべきときは、この限りでない。

自白の撤回は難しい

ある事実を一度「認める」と言ってしまうと、原則として、それを撤回することはできないようです。(※禁反言の法理)

相手の主張する事実を一度認めると「自白」したということになります。

自白の撤回ができるのは、以下のいずれかに該当する場合のようです。

  1. 相手方がそれに同意してくれた場合
  2. 刑事上罰すべき他人の行為により自白した場合
  3. 自白の内容が事実に反し、かつ錯誤に基づいて自白をした場合

上記3については、事実に反することの証明が必要のようです。相手方に立証責任があることまで、こちらで立証しなければなりません。

『禁反言の法理』
一方の自己の言動(または表示)により他方がその事実を信用し、その事実を前提として行動(地位、利害関係を変更)した他方に対し、それと矛盾した事実を主張することを禁ぜられる、という法。
(出典:Wikipedia)
ですので、
原則としてはどの項も否認する形をとり、
「第○項は否認する。但し、『・・・』の部分は認める」というように、引用部分のみ「認める」と述べる方がよいようです。
なお、自分が関係していないことは「不知」を述べておきます。不知と述べれば否認と同じく、相手の言い分を争ったことになります。
「沈黙」した部分は、相手の言い分を「認める」にみなされてしまいますので、
「その他原告(あるいは被告)が明らかに認める以外の事実は全て争う」と述べる(あるいは記載する)方法もあるようです。
あるいは
「第○項については、と調査の上答弁する」と記載しておき、次回以降に持ち越すこともできるようです。
その場合は、次回以降の準備書面に答弁を記載すればよいですが、
ただしあまり遅れると、時機に遅れた攻撃防御方法として却下されてしまう場合があるようです。

民事訴訟法

第156条(攻撃防御方法の提出時期)

攻撃又は防御の方法は、訴訟の進行状況に応じ適切な時期に提出しなければならない。

第157条(時機に後れた攻撃防御方法の却下等)

1.当事者が故意又は重大な過失により時機に後れて提出した攻撃又は防御の方法については、これにより訴訟の完結を遅延させることとなると認めたときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、却下の決定をすることができる。

2.攻撃又は防御の方法でその趣旨が明瞭でないものについて当事者が必要な釈明をせず、又は釈明をすべき期日に出頭しないときも、前項と同様とする。