【第62回】敷金返還等請求の訴状(4)

はじめに

今回、東京簡易裁判所に提出した敷金返還等請求の訴状について紹介しておりませんでしたので、

その内容について記載したいと思います。

複数回に分けて記載したいと思います。第4回です。

第2 内容証明郵便の送付に要した費用

被告らとのやり取りのために、内容証明郵便の送付に要した費用について、

損害賠償を請求する理由を記載しています。

第2 内容証明郵便の送付に要した費用

1(1) 貸主は、借主に対し、本物件明渡し後、遅滞なく敷金を返還する債務を負っている。その結果、貸主の地位を有する被告らのいずれかは、客観的資料に基づき敷金を精算し、遅滞なく、原告に対し、その精算内容及び根拠を具体的かつ正確に説明する義務を負っている。
 しかし、上記第1に記載のとおり、被告らが、借主であった原告に対し、具体的かつ正確で一貫した説明が十分になされないまま、本来返還すべき敷金が返還されることはなかった。

(2) そして、上記第1の2(3)に記載のとおり、敷金返還請求の対象となる相手についても、原告から再三にわたって確認を求めたものの、被告オーナー会社、被告管理会社及び■■弁護士の三者間で、一貫した回答が得られずに十分な確証を得られるまでに至らなかった。

その結果、被告らのこれらの行為により、原告は、4回にわたって内容証明郵便を送付(①令和3年■月■日(甲第3号証の1)2390円、②同月■日(甲第3号証の3)2635円、③同年■月■日(甲第3号証の5)1540円、④同月■日(甲第3号証の7)2270円)することになり、かかる送付費用として合計8835円(甲第7号証の1から4)による損害が生じた。

2 上記1の行為は、被告オーナー会社又は被告管理会社が、敷金の返還債務を負う貸主たる地位の主体を明確にしなかったり、法的措置をとらせることを困難にしたりすることで、原告に原状回復費用を負担させ、敷金の返還額を低廉におさえようとする意思に基づく故意、または、敷金返還債務を負う貸主たる地位の主体や正確な敷金返還額の算出や根拠について確認作業をとり、貸主の立場として、借主である原告に説明をすれば容易に防げたにもかかわらず十分な確認を行わなかったという過失によるものである。

3 よって、原告は、主位的請求として被告オーナー会社に対し、予備的請求として被告管理会社に対し、債務不履行に基づく損害賠償請求として、内容証明郵便の送付に要した費用合計8835円の請求を求める。

第3 精神的損害

第3 精神的損害

1(1) 上記第1の2(3)に記載のとおり、被告オーナー会社及び被告管理会社は、①敷金返還請求の相手方(敷金返還債務を負う貸主たる地位の主体)について一貫しない回答を続けた。
 なお、被告オーナー会社の■■氏の電話での発言に関して、■■弁護士は、令和3年3月18日付けの書面(甲第3号証の8)にて、「本物件に関しましては、賃貸人代理として委託を受けている通知人管理会社(被告管理会社)にご連絡、ご請求いただければ同社が対応させていただくこととなりますので、通知人オーナー会社(被告オーナー会社)から貴殿(原告)へのご説明はこの趣旨であり、」と■■氏の発言の趣旨を説明している。

ところが、■■氏との電話でのやり取り(甲第8号証の1、2)から分かるとおり、「うち(被告オーナー会社)は貸主ではない」、「私ども(被告オーナー会社)はあくまでも建物の所有者というかたちになってまして、法律的に言うと貸主ではない」(甲第8号証の1、項13)、「私ども(被告オーナー会社)は、全然、当事者、あの契約当事者とは今なっていない」(甲第8号証の2、項13)、「訴訟のかたちになるとすると、管理会社(被告管理会社)を相手方でやって頂かないといけなくなる」との■■氏の発言は、契約当事者である法的な貸主(敷金返還請求の「法的な」相手先)は被告オーナー会社ではなく被告管理会社であるという趣旨であることは明らかであるから、■■弁護士の説明は筋が通っておらず、原告としては不信感が増す一方であった。
(なお、令和3年3月8日に、被告公社の■■氏より原告に電話があり、本物件の貸主について被告らの資料管理に過失があったため被告らの説明が食い違ったとの趣旨の説明があったが、■■弁護士の説明は、この■■氏の説明とも食い違っている。)

その結果、原告にとっていつまでも訴訟を起こすべき相手方について確証を得ることはできず、原告はその対応に時間的、精神的な負担を強いられた。
また、②原告が原状回復費用を負担する根拠についても、(原状回復工事見積書のルームクリーニング代と備考欄に「善管注意義務違反」と記載された3明細を除き、)被告らの主張は以下のとおり、不自然に二転三転している。

令和3年1月29日に、被告管理会社は原告へメールにて原状回復工事見積書(甲第2号証の3)を送付し、通常損耗特約(本件特約の「生活することによる汚損について、その復旧費用は賃借人と賃貸人とで2分の1ずつ負担すること」)を根拠に原告負担とした。

その後、令和3年2月19日の■■弁護士との電話でのやり取り、及び■■弁護士からの令和3年2月26日付け内容証明郵便(甲第3号証の2)にて、善管注意義務違反に基づくものと変遷した。

さらにその後、原告が被告管理会社に対して、善管注意義務違反の具体的根拠の説明をあらためて催促したところ、ようやく、■■弁護士からの令和3年3月18日付け書面(甲第3号証の8)にて回答があったが、一部の部位はやはり通常損耗特約に基づくものと再度変遷した。(令和3年2月19日の■■弁護士との電話では、善管注意義務違反について、その損傷の程度に応じて被告らが独自に3区分に分類しており、当該部位の損傷の程度は中程度に該当すると被告らが判断したため50%原告負担としたとの説明を原告は受けていた。)

以上のとおり、原告が原状回復費用を負担する根拠についても、被告らの説明は、(第2に記載のとおり、具体性に欠け不十分で速やかでないだけでなく、)その内容も一貫性なく不自然に変遷しており、原告は、その都度振り回され続け、その対応に時間的、精神的な負担を強いられた。

 (2) また、被告オーナー会社及び被告管理会社から委任を受けた■■弁護士からの書面には、「貴殿(原告)が立会を拒否」したため、原告による賃貸物件の使用状況が「善管注意義務違反に該当することについて」の説明が「実施できなかった」旨の記載がある(甲第3号証の4)が、この点については、原告が作成した内容証明郵便(甲第3号証の7)に記載もあるように、原告が立会を拒否したわけではなく、新型コロナによる緊急事態宣言下であったことや、原告の娘が他人に感染させるかもしれない病気を患っていたことから、被告管理会社の職員の健康や社会情勢を考慮して、被告管理会社に意見を聞いた上で敢えて立会いを控えたものである。

   それにもかかわらず、原告が不誠実に立会いを拒否し、それを理由に、退去した本物件の使用状況を説明できないよう、原告に非があるような主張をしたことは、原告の被告管理会社を慮った行為を逆手にとるものであり、悪質である。

(3)さらには、上記第1のような、正当な額の敷金を返還していないことや善管注意義務違反の根拠に関する資料の送付がないなどの事情があることから、被告らの原状回復費用負担に関する説明が合理性に欠ける旨、原告から指摘したところ、■■弁護士は、反論として、「貴殿(原告)の負担を軽減させるために通知人(被告ら)において比較的軽微な汚損部分、破損部分については全部ないし一部の請求を控えたに過ぎ」ず、原告が今後も主張を続けるのであれば、「通知人としても残額についての請求を検討せざるを得」ない(甲第3号証の2)などという言い回しを用いて、敷金の約4分の1しか返還を受けていない原告に対し、通常の一消費者であれば圧力を感じてこれ以上の交渉を続けることを躊躇させるような回答を行った。

2 以上より、賃貸借契約に関する紛争等について、もともとは何らの専門的知識を有していなかった一消費者である原告に対し、被告らのいずれかは、敷金返還請求の相手方について正確な事実を伝えず、また、約4分の3の敷金の返還を諦めさせるように圧力をかけ、敷金の返還を免れようとした不誠実な行為の結果、原告は、それに対応するために、色々な資料や文献を調べたり、メール、電話、内容証明郵便等を利用したりして被告らと対応することになり、多大な時間的、精神的な労力、負担を要することになったので、その精神的損害は5万円をくだらない。

3 よって、原告は、被告らに対し、それぞれ、不法行為に基づく損害賠償請求として5万円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員の支払いを求めるものである。

まとめ

第4 以上より、

 敷金の返還について、主位的請求として、被告オーナー会社に対し、予備的請求として、被告管理会社に対し、金40万6087円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員の支払を求める。

 また、内容証明郵便の送付に要した費用について、債務不履行に基づく損害賠償として、主位的請求として、被告オーナー会社に対し、予備的請求として、被告管理会社に対し、金8835円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員の支払を求める。

 さらには、精神的損害として、被告オーナー会社及び被告管理会社に対し、それぞれ金5万円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員の支払を求める。