【第19回】ハウスクリーニング特約1

ハウスクリーニング特約とは

ハウスクリーニングとは、一般的に、室内を清掃・消毒し、入居前の状態に近い状態に回復する作業をいい、この特約の意味は、目的物返還時にハウスクリーニングを行うこと、およびごれに関連する費用の負担を定めたものと理解されている。
そして、この特約の効力は、実際に専門業者による清掃・消毒がなされ、その金額が相当である等合理的な内容であれば、その範囲で有効であると解釈されている。
(仙台弁護士会編『賃貸住宅紛争の上手な対処法』)

しかし、ハウスクリーニングの意味は必ずしも画一的に理解されているわけではないです。

では、実際に裁判ではどのような判決が下されているのでしょうか。

そこで、調べてみました。

東京地判平成25年5月27日

本判決について、私Hayatoが、以降の章で、個人的に抜粋・整理してみました。

この事案では、賃借人が、

敷金からルームクリーニング費用2万1000円を控除してこれを返還しないのは不当であり、不法行為にあたるとして、

賃貸人に対し、2万1000円の返還等を求めました。

判決

  • 賃貸人は、賃借人に対して、2万1000円を支払え。

など、でした。

裁判所の判断

  • 仲介業者が、賃借人に対して、「重要事項説明書」と「賃貸住宅紛争防止条例に基づく説明書」(以下「条例に基づく説明書」)を交付して、賃貸借契約の概要を説明した。
  • 重要事項説明書には、以下の記載がある。

期間内解約等により本物件賃貸借契約が終了するときは賃貸借契約終了日までに契約当初の原状に回復し、賃貸人に本物件の明け渡しをしなければなりません。原状回復に要する費用は、東京都の賃貸住宅紛争防止条例に基づき求めるものとします。
ただし、ハウスクリーニング費用は、賃借人の全額負担となります。

  • 条例に基づく説明書には、以下の記載がある。

本契約では、経年劣化及び通常の使用による住宅の損耗等の復旧については、賃借人はその費用を負担しませんが、退去の時、賃借人の故意・過失や通常の使用方法に反する使用など、賃借人の責めに帰すべき事由により住宅の損耗等があれば、その復旧費用を負担することになります。以下、原状回復に関する借主の負担についてご説明いたします。

・・・

(2)ハウスクリーニングは、ゴミの撤去、掃き掃除、拭き掃除、水廻り清掃、換気扇やレンジ回りの油汚れの除去、照明器具の汚れの除去、エアコンの汚れの除去等を専業業者により実施します。この費用は借主の全額費用負担となります。(25,000円位が目安となっています。)

  • 賃貸人は、実際には、専門の業者にルームクリーニングを委託することはなかった。
  • 通常損耗にとどまる限り、貸室の清掃を常に賃借人の負担とするためには、その旨の明確な合意が必要である。
  • 重要事項説明書には、ルームクリーニング費用が賃借人の負担である旨が記載されているものの、条例に基づく説明書の記載と併せて読めば、本件清掃費用負担特約は、専門業者に清掃を委託した場合に生じる費用を賃借人の負担とするものであり、専門業者に清掃を委託する必要のない場合にまでルームクリーニング費用を賃借人に負担させる趣旨を含んでいること、実際に行われた清掃の有無程度にかかわらず、一定のルームクリーニング費用を賃借人に負担とすることや賃貸人が清掃を実施した場合にも相当費用の支払義務が賃借人に生じることは明示されていない
  • したがって、賃借人と賃貸人との間で、賃借人が自ら貸室を清掃した場合に生じた費用を賃借人の負担とすることについて、明確な合意があったとは認めることはできない

個人的な見解

ハウスクリーニング特約についての個人的な見解です。

  1. 金額が合理的な金額であったとしても、実際に専門業者による清掃がなければ、特約が不成立となる場合がある。
  2. 特約について明確な合意があったかは、重要事項説明書や条例に基づく説明書などの交付書面から、総合的に解釈され判断される。