【第38回】相手方の弁護士からの回答書が届く

はじめに

以前のブログに記載の通り、敷金返還債務を負うと考えられるオーナー会社へ、敷金返還を求める内容証明郵便を送付することにしました。

1週間後に、オーナー会社から委任を受けたとする弁護士さんから、私が送付した内容証明郵便に対する回答を、内容証明郵便にて受領しましたので、その内容について記載したいと思います。

相手方の弁護士からの回答とは

オーナー会社から委任を受けた弁護士さんから回答いただきましたが、この弁護士さんは、管理会社が本事案について委任した弁護士さんと同じ方でした。

なお、”オーナー会社から委任を受けた弁護士”とのことでしたが、オーナー会社に確認したところ、別のブログに記載した通り、この法律事務所には委任はしていない、とのことでした。。。

委任していないとなると、この弁護士さんからの回答はどのような扱いになるのでしょうね。。

さて、回答の内容は以下のようなものでした。一部加工しています。

ご 連 絡

冠省 当職らは、オーナー会社から委任を受けた弁護士でありますが、オーナー会社の代理人として、Hayato殿からの令和3年2月20日付通知書(以下「本件通知書」といいます)に対し、以下のとおりご通知申し上げます。

1. Hayato殿は、本件通知書において、オーナー会社が敷金から控除した原状回復工事代金40万6087円(以下「本件工事代金」といいます)について、5万8300円を超えた部分の負担義務はないとして、差額である34万7787円を請求されております。

この点、Hayato殿との平成19年12月22日付貸室賃貸借契約(以下「本件賃貸借契約」といいます)第6条3項但書において、「甲(オーナー会社)は、本物件の明け渡し時に、賃料等の滞納、原状回復に要する費用の未払いその他の本契約から生じる乙(私が勤務する会社)及び丙(Hayato殿)の債務の不履行が存在する場合には当該債務の額を敷金から差し引くことができる」とされております。

オーナー会社からHayato殿に対し、2021年1月29日付解約精算見積書を送付し、2021年2月10日付原状回復工事御見積書(以下「本件見積書」といいます)を添付のうえ、本件工事代金が40万6087円であること、同額を控除して敷金の返還を行うことをご連絡いたしましたが、Hayato殿から拒否されたため、「原状回復に要する費用の未払い」として本件工事代金を控除した残額を返還させていただきました。

また、本件見積書に基づき口頭にてご説明しておりますとおり、本件工事代金は適正なものですので、Hayato殿のご請求には応じかねます。以下、本件工事代金についてご説明申し上げます。

2. 本件見積書の備考欄において、「賃貸住宅紛争防止条例に基づく説明書による」又は「善管注意義務違反」と記載されている事項につきましては、いずれもHayato殿の責めに帰すべき事由による損耗等に該当するものです。

そのため、本件賃貸借契約第11条「通常の使用に伴い生じた本件物件の損耗を除き、本物件を原状回復しなければならない」及び同契約と一体となる平成19年12月22日付賃貸住宅紛争防止条例に基づく説明書(以下「本件説明書」といいます)【2】「当該契約における賃借人の負担内容について」・[2](1)「賃借人の責めに帰すべき事由による汚損又は破損について、その復旧費用は賃借人の負担とすること」とされております。

よって、本来、これらの項目については全額Hayato殿が負担すべき原状回復工事費用となります。

この点をふまえて、以下において、Hayato殿の主張される各項目についてご説明いたします。

3. ルームクリーニング代について
ルームクリーニング代は、本件説明書【2】当該契約における賃借人の負担内容について・[1]において「本契約では、特約として以下のことを賃借人の負担で行うことにしています」とし「室内全体のハウスクリーニング(自然損耗・通常使用による部分を含む)」と明示しております。

本件説明書は、東京における住宅の賃貸借に係る紛争の防止に関する条例・第2条に基づく文書であり、本件賃貸借契約締結時にその記載内容を「当該住宅を借りようとする者」にご説明のうえで交付したものであって、本件賃貸借契約と一体となるものです。

よって、「賃貸借契約書に一切記載が無い」「借主兼入居者である私に対して説明も無かった」というご主張は理由がないものと考えます。

また、「全居室の壁・天井クロス、床の張替を行うことになっており、改めてクリーニングを行う必要性は乏しい」とのご主張は壁、床以外の玄関、トイレ、キッチン設備、浴室、洗面設備、居室扉、窓などが含まれていないため、室内全体のハウスクリーニングで無いことにより理由がないものと考えます。

4. 壁クロス張替費用について
壁クロスにつきましては、明け渡し後に現状確認を行ったところ、削れ、へこみに加え、クロスがめくれ上がっている箇所やインクが付着している箇所等が散見され、入居時点が新品でなかったこと及び13年間の居住期間を考慮しても劣悪な損傷が認められます。

なお、Hayato殿の主張される入居時の口頭での説明(どうせクロスは退去時に張替えるから)につきましては、そのような発言の有無や趣旨を確認することはできませんが、一担当者が契約内容に反して賃借人の義務を免除することはあり得ず、少なくとも費用負担についての判断に影響を与えるものではないと考えます。

5. 床上貼り費用について
玄関、廊下及び各居室の床につきましては、明渡し後に現状確認を行ったところ、削れ、へこみに加え、ワックスが剥げている箇所やフローリングが破損している箇所等が散見され、13年程度の居住期間を考慮しても劣悪な損傷が認められます。

なお、Hayato殿は、オーナー会社において損傷の程度に応じてHayato殿の負担割合を判断しているところ、その区別が合理性を欠くとの主張をされております。

しかし、そもそも、「賃借人の責めに帰すべき事由による汚損又は破損について、その復旧費用は賃借人の負担とすること」が原則であるところ、Hayato殿の負担を軽減させるためにオーナー会社において比較的軽微な汚損部分、破損部分については全部ないし一部の請求を控えたに過ぎません。

この点を主張されるのであれば、オーナー会社としても残額についての請求を検討せざるを得ませんことを申し添えます。

6.網戸張替について
本件見積書中、網戸については2面のうち1面について張替え費用を計上しております。

張替の対象となる網戸は側面及び下部の網が枠から外れる等といった破損があり、13年程度の居順期間を考慮しても劣悪な損傷が認められます。この点、張替対象としていない他方の網戸はこのような損傷がないことから、一方にのみ通常損耗、経年劣化が生じることは考えにくいものといえます。

7.まとめ
以上のとおり、本件工事代金は適正なものですので、Hayato殿のご請求には応じかねます。この点につきましては、各箇所の損傷状況についての参考として、令和3年1月10日と令和3年2月12日に撮影した写真の一部を普通郵便にて別送させていただきますので、ご参照いただければと存じます。

なお、本件に関しましては、今後、交渉等一切につきまして当職らが担当させていただきますので、連絡事項等ございましたら当職ら宛ご連絡くださいますようお願いいたします。

草々

令和3年2月26日

東京都〇〇
通知人 オーナー会社
弁護士 ○○

被通知人
東京都〇〇
Hayato殿