【第72回】相手方の準備書面(3)第1回

はじめに

期限から2週間経過後、ようやく被告らから追加の準備書面が送付されてきましたので、その内容について記載します。第1回です。

なお、この準備書面における主張および証拠は、最終期日にて、時機に遅れた攻撃防御方法として却下されました。

時機に遅れた攻撃防御方法について、機会があれば、調査したいと思います。

準備書面(3)の記載内容

準備書面(3)の記載内容は以下の通りです。長文ですので、複数回にわたって記載します。

準備書面(3)

第1 本件特約の内容について

 1 本件賃貸借契約について

 本件賃貸借契約は、平成19年■月■日、貸主である被告オーナー会社と借主である訴外■■及び原告との間で契約期間2年として締結された。
 本件物件は、訴外■■の社宅として利用され、原告とその妻及び■■(契約締結当時■歳。以下「原告ら」という)が入居した。
 本件賃貸借契約は平成21年■月以降も更新されて、契約締結からおよそ13年後の令和3年■月■日に合意解約により終了まで、原告らが入居していた。
 原告は被告オーナー会社に対して、令和3年■月■日に本件建物を明け渡したが、明渡し後に物件状況確認を実施したところ、本件建物の内部には原告ら入居者の責に帰すべき事情によって生じたとしか考えられない汚損ないし破損(特別損耗)が多く散見された。そのため、被告オーナー会社及び本件建物の管理業務を委託されている被告管理会社(以下、あわせて「被告ら」という)は、13年という賃貸借期間を考慮し、原告の負担が重くならないよう配慮したうえで、特別損耗についての復旧費用を算出し(乙2の3)、敷金から充当した。
 これに対して原告が、これを不服として敷金等の返還を求めたのが本件である。

 2 本件賃貸借契約における現状回復に関する特約(以下「本件特約」という)

 (1)本件賃貸借契約は、契約書本体(甲1の1)のほか、賃貸住宅紛争防止条例に基づく説明書(甲1の2、乙4)、退去時の住宅補修査定基準(乙1)が一体となっており、これらを綴って賃貸人及び賃借人において契印を押して袋とじの状態にされている(乙5)。
 (2)本件賃貸借契約において、原状回復に関し、「通常の使用に伴い生じた本件物件の損耗を除き、本物件を現状回復しなければならない」とされており(同契約11条)、さらに特約として下記のとおり規定されている(賃貸住宅紛争防止条例に基づく説明書・1頁)。なお、本説明書は、東京都住宅政策本部のひな形等に従ったものである。

(賃貸住宅紛争防止条例に基づく説明書の記載内容について省略)

 (3)本件特約のうち、本訴訟に関係する主たる内容は以下のとおりである(以下「本件特約ア」「本件特約イ」「本件特約ウ」という)。
 本件特約アは自然損耗を含めてハウスクリーニングの費用を賃借人負担とするもの、本件特約ウは自然損耗については、賃貸人と賃借人の2分の1ずつの負担とする特約である。これに対して、本件特約イについては、賃借人の責めに帰すべき事由(故意又は過失)による汚損、破損(特別損害)について復旧費用を賃借人の負担とするものであり、民法の一般原則を注意的に定めたものである。
 ア 室内全体のハウスクリーニング(自然損耗・通常使用による部分も含む)を賃借人の負担とすること(本件特約ア)
 イ 賃借人の責めに帰すべき事由による汚損又は破損について、その復旧費用は賃借人の負担とすること(本件特約イ)
 ウ 生活することによる汚損について、その復旧費用は賃借人と賃貸人とで2分の1ずつ負担すること(本件特約ウ)

(続く、、、)