【第74回】相手方の準備書面(3)第3回

はじめに

期限から2週間経過後、ようやく被告らから追加の準備書面と証拠書類が送付されてきましたので、その内容について記載します。第3回です。

※この準備書面における主張および証拠は、最終期日にて、時機に遅れた攻撃防御方法として却下されました。

準備書面(3)の記載内容

準備書面(3)の記載内容は以下の通りです。長文ですので、複数回にわたって記載します。

(・・・続き・・・)

4 本件特約が有効であること2(賃貸人側による説明によって賃借人が特約内容を明確に認識したうえで合意されたものであること)


 上記(1)に加え、本件において賃借人である原告は特約内容を明確に認識したうえで合意しており、本件特約は有効である。
本件特約については、本件賃貸借契約を締結するにあたって、賃貸人から依頼を受けた仲介人である訴外■■株式会社の訴外■■氏(以下「訴外■■氏」という)から原告に対し、賃貸住宅防止条例に基づく説明書(乙4)及び退去時の住宅補修査定基準(乙1)に基づき具体的かつ詳細な説明が直接行われている。
訴外■■氏は、宅地建物取引主任者(現在の宅地建物取引士)であり、専門家として本件特約の説明を行っている。
具体的には、退去時における住宅の損耗等の復旧について、費用負担の一般原則としては、①経年変化及び通常の使用による住宅の損耗等の復旧については、賃貸人の費用負担で行い、賃借人はその費用を負担しないとされていること、②賃借人の故意・過失や通常の使用方法に反する使用など賃借人の責めに帰すべき事由による住宅の損耗等があれば、賃借人は、その復旧費用を負担するとされていることを説明したうえで、退去時における住宅の損耗等の復旧について、一般原則とは異なる特約を定めることができること、ただし、特約は合理的な内容であることが必要となることを説明している。
そのうえで、本件賃貸借契約においては、室内全体のハウスクリーニング(自然損耗・通常使用による部分も含む)を賃借人の負担とすること(本件特約ア)、賃借人の責めに帰すべき事由による汚損又は破損については、その復旧費用は賃借人の負担とすること(本件特約イ)、及び生活することによる汚損について、その復旧費用は賃借人と賃貸人とで2分の1ずつ負担すること(本件特約③)等が規定されていること、退去にあたって賃借人が負担しうる工事の内容については、退去時の住宅補修査定基準(乙1・3頁)に定められていることを説明している。
原告は自身が訴外■■氏の説明を直接聞いた上で、その内容を理解し、納得したうえで、賃貸住宅紛争防止条例に基づく説明所(乙4)を受領している。同書面の受領者(借受け予定者)は「訴外■■」名義になっているものの、署名、押印しているのは原告本人である(乙4・2頁目に原告「■■」と署名した後に二重線で抹消し、訴外■■に書き直していることから明らかである)。さらに、本件賃貸借契約書(甲1の1)の訴外■■の署名も原告が行っており、原告本人が本件特約を含む賃貸借契約について直接契約書(1乙5)を確認し、宅地建物取引主任者である訴外■■氏から十分な説明を受けたこと、そのうえで合意したことは明らかである。
なお、本件賃貸借契約は訴外■■の社宅として本件物件を利用する法人契約であること、原告自身が訴外■■の署名を行っていること等からすれば、消費者保護法が適用される個人の契約ではない。

5 小括
 以上より、本件賃貸借契約において、賃借人である原告が補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記されていること、また、賃貸人側(訴外■■氏)による説明によって賃借人である原告が特約内容を明確に認識したうえで合意されたものであることから、本件特約(本件特約ア、イ、ウ)はいずれも有効である。

(続く、、、)