【第84回】控訴について 第3回

はじめに

先日、判決言い渡しがなされましたが、数日後に判決書が特別送達にて送付されました。

判決に不服がある場合は、控訴することができます。

そこで、控訴について複数回に分けて記載したいと思います。第3回目です。

控訴審の方式について

控訴審の構造・方式として、事後審制、覆審制、続審制があります。

事後審制

第1審が使用した資料から見て第1審判決が正当かどうかを控訴審が検討する方式。
資料に新しいものが付け加わることはない。
現行刑訴法の控訴審は事後審制とされている。

覆審制

第1審手続きがあったことを無視して、完全に控訴審がもう一度審理し直すという方式。
資料は覆審たる控訴審で得られたもののみが使われる。

続審制

事後審制と覆審制の折衷。第1審手続きの続きとして審理する。
現行民訴法の控訴審は、続審制とされている。
資料は、控訴審で提出された新しい資料も使うが、第1審の資料も使う。(298条)
しかし、判決対象は、原則として不服申立てであり、控訴審の判断が判決主文において第1審判断と異なる場合にのみ第1審判決は取り消される。

続審制は、新しい資料を認めるがゆえに、覆審制と共通の性格を持つとされるが、控訴審で時機に後れた攻撃防御方法の却下を果敢に適用すれば事後審制にも近づく。
301条での提出期限の制限を入れた現行法では、旧法よりも事後審的要素が強くなったとされ、最近の実務は、続審制の(事後審制と覆審制の)中間的性格を事後審制的に運用しているとされる。

以下に民事訴訟法の関連条項を抜粋します。
(第一審の訴訟行為の効力等)
第二百九十八条 第一審においてした訴訟行為は、控訴審においてもその効力を有する。
2 第百六十七条の規定は、第一審において準備的口頭弁論を終了し、又は弁論準備手続を終結した事件につき控訴審で攻撃又は防御の方法を提出した当事者について、第百七十八条の規定は、第一審において書面による準備手続を終結した事件につき同条の陳述又は確認がされた場合において控訴審で攻撃又は防御の方法を提出した当事者について準用する。

(攻撃防御方法の提出等の期間)
第三百一条 裁判長は、当事者の意見を聴いて、攻撃若しくは防御の方法の提出、請求若しくは請求の原因の変更、反訴の提起又は選定者に係る請求の追加をすべき期間を定めることができる。
2 前項の規定により定められた期間の経過後に同項に規定する訴訟行為をする当事者は、裁判所に対し、その期間内にこれをすることができなかった理由を説明しなければならない。
控訴審における新たな攻撃防御方法の提出

民事訴訟法157条1項にいう時機に後れた提出とは、事件の具体的な進行状況や当該攻撃防御方法の性質に即して、その提出時期よりも早期に提出することが期待できる客観的な事情があったかどうかにより判断される。
控訴審の第1回口頭弁論期日など、第2審の当初に新たな攻撃防御方法を提出することは、第2審からみれば時機に後れたことにはならないが、第1審の経過をも通観すれば時機に後れたことになる場合があり、このような場合をどのように判断すべきかが問題になることろ、控訴審が続審であること、第2審のみを基準とすると第1審における集中審理を害する結果になることから、時機に後れたかどうかは、第1審・第2審を通じて判断すべきとされている(最判昭和30年4月5日 等)。

※民事訴訟法 157 条に関して、時機に後れたかどうかの判断は、単に控訴審における訴訟の経過ではなく、第 1 審以来の訴訟手続の経過を通観して判断すべきものとされている(最判昭和30年4月5日)。

次回に続きます、、、