【第106回】控訴審判決4

はじめに

敷金返還請求事件の控訴審において、先日、裁判所から判決文が送付されてきました。

今回はその内容について記載しようと思います。控訴人が賃貸人で、被控訴人が賃借人です。

裁判所の判決文(4)

(3)からの続き)

3 争点(3)(被控訴人が負担すべき現状回復費用の額)について
上記2のとおり、被控訴人は、本件特約に基づくルームクリーニング代の負担義務を負わない。そうすると、その余の点について判断するまでもなく、本件一覧表のルームクリーニング代相当額を敷金から控除する旨の控訴人の主張には理由がない。
以下、ルームクリーニング代(番号16)を除いた本件一覧表の工事部位欄記載の内容について、特別損耗に該当するか否か、及びその原状回復費用として敷金から控除されるべき額について判断する。(1)「玄関・廊下壁クロス張替え」(番号1)について
証拠(乙2の写真①、乙6の写真①②)によれば、本件居室の玄関付近やリビングにつながる通路の壁面クロスには、複数箇所にわたって、相当の大きさの剥がれたような損傷及び変色を認めることができ、その内容及び程度に照らし、被控訴人の居住期間(約13年間)を考慮しても、通常損耗の範囲を超えるものであって、特別損耗というべきであり、その原状回復として、玄関や通路の壁クロスの張替工事が必要と考えられる。そして、本件見積書によれば、管理会社は、上記損傷を実際に確認した上で、その原状回復費用■■円と見積もったと認められ(消費税別。以下、本件見積書の見積額について同じ。)、上記損傷の内容等に照らして相当といえるから、上記損傷の原状回復費用として相当と認める。よって、上記同額に、控訴人が主張する負担割合(50%)を乗じた■■円につき、被控訴人が負担する原状回復費用と認める。

(2)「洋室8.1帖 壁クロス張替え」(番号2)について
証拠(乙2の写真⑧、乙6の写真⑮⑯)によれば、本件居室の北西側洋室の壁クロスには衝突によって生じたような複数の凹みがあるほか、相当の大きさの黒ずんだような変色が認められ、被控訴人の居住期間を考慮しても、通常損耗の範囲を超えるものであって、特別損耗というべきであり、その原状回復として、上記居室の壁クロスの張替工事が必要と考えられる。そして、本件見積書によれば、管理会社はその原状回復費用を■■円と見積もったことが認められるが、他方、上記凹みや変色が広範囲に及ぶとまではいえず、また、上記洋室の壁の全体にわたって存在するものでないと認められ、これらを総合すれば、上記損傷の原状回復費用として■■円を相当と認める。よって、上記同額に、控訴人が主張する負担割合(50%)を乗じた■■円につき、被控訴人が負担する原状回復費用と認める。

(3)「洋室8.1帖 クローゼット壁・天井クロス張替え」(番号3)について
証拠(乙6の写真㊹ないし㊻)によれば、本件居室の北西側洋室南側クローゼットの壁クロスには破れがあり、また、同クローゼットの天井壁面に傷があることが認められ、被控訴人の居住期間を考慮しても、通常損耗の範囲を超えるものであって、特別損耗というべきであり、その原状回復として、上記居室の壁クロス等の張替工事が必要と考えられる。そして、本件見積書によれば、管理会社はその原状回復費用を■■円と見積もったことが認められるが、他方、上記変色が広範囲に及ぶとまではいえず、また、天井クロスの傷も大きいとまではいえないことにも照らせば、上記損傷の原状回復費用として■■円を相当と認める。そうすると、上記原状回復費用に、控訴人が主張する負担割合(50%)を乗じた■■円につき、被控訴人が負担する原状回復費用と認める。

(4)「洋室6.4帖 壁クロス張替え」(番号4)について
証拠(乙2の写真⑳、乙6の写真㊵㊶)によれば、本件居室南西側の寝室の東側壁面には、多数の筋状の傷やインクによると思われる汚れが認められ、被控訴人の居住期間を考慮しても、通常損耗の範囲を超えるものであって、特別損耗というべきであり、その原状回復として、上記居室の壁クロスの張替工事が必要と考えられる。そして、本件見積書によれば、管理会社はその原状回復費用を■■円と見積もったことが認められるが、他方、上記傷や汚れは上記寝室の壁の全面に及ぶとまでは認められないことにも照らせば、上記損傷の原状回復費用として■■円を相当と認める。そうすると、上記原状回復費用に、控訴人が主張する負担割合(50%)を乗じた■■円につき、被控訴人が負担する原状回復費用と認める。

(5)「リビング10.3帖 壁クロス張替え」(番号5)について
証拠(乙2の写真⑮⑯、乙6の㉑・㉛ないし㉞)によれば、本件居室南東側のリビングの壁(東側、西側、南側)の全体にわたり、多数の汚れ、インク等によると思われる汚れ等の損傷が認められ被控訴人の居住期間を考慮しても、通常損耗の範囲を超えるものであって、特別損耗というべきであり、その原状回復として、上記居室の壁クロスの張替工事が必要と考えられる。そして、本件見積書によれば、管理会社はその原状回復費用を■■円と見積もったと認められ、上記損傷の内容等に照らして相当といえるから、上記損傷の原状回復費用として相当と認める。よって、上記同額に、控訴人が主張する負担割合(50%)を乗じた■■円につき、被控訴人が負担する原状回復費用と認める。

(6)「キッチン3.6帖 壁クロス張替え」(番号6)について
証拠(乙2の⑩、乙6の㉒ないし㉔)によれば、本件居室西側中央のキッチンの東側出入口付近の壁面クロスに相当の大きさの汚れや破れた損傷が認められ、控訴人の居住期間を考慮しても、通常損耗の範囲を超えるものであって、特別損耗というべきであり、その原状回復として、上記キッチンの壁クロスの張替工事が必要と考えられる。そして、本件見積書によれば、管理会社は、その原状回復費用を■■円と見積もったと認められ、上記損傷の内容等に照らして相当といえるから、上記損傷の原状回復費用として相当と認める。よって、上記同額に、控訴人が主張する負担割合(50%)を乗じた■■円につき、被控訴人が負担する原状回復費用と認める。

(7)「洗面所 壁クロス張替え」(番号7)について
証拠(乙2の写真④、乙6の写真⑦⑧)によれば、本件居室東側中央の洗面所の南側出入口付近の壁クロスには破れ、赤色のインクによるものと思われる汚れ又は多数の削れたような損傷が認められ、控訴人の居住期間を考慮しても、通常損耗の範囲を超えるものであって、特別損耗というべきであり、上記洗面所の壁クロスの張替工事が必要と考えられる。そして、本件見積書によれば、管理会社は、その原状回復費用を■■円と見積もったと認められ、上記損傷の内容等に照らして相当といえるから、上記損傷の原状回復費用として相当と認める。よって、上記同額に、控訴人が主張する負担割合(50%)を乗じた■■円につき、被控訴人が負担する原状回復費用と認める。

(8)「トイレ 壁クロス張替え」(番号8)について
証拠(乙6の写真㊷㊸)及び弁論の全趣旨によれば、本件居室東側中央のトイレの壁クロスには、相当の大きさの黒ずんだような変色や接触によって生じたような凹みが認められ、控訴人の居住期間を考慮しても、通常損耗の範囲を超えるものであって、特別損耗というべきであり、上記トイレの壁クロスの張替工事が必要と考えられる。そして、本件見積書によれば、管理会社は、その原状回復費用を■■円と見積もったと認められ、上記損傷の内容等に照らして相当といえるから、上記損傷の原状回復費用として相当と認める。よって、上記同額に、控訴人が主張する負担割合(50%)を乗じた■■円につき、被控訴人が負担する原状回復費用と認める。

(5)に続く)