【第20回】ハウスクリーニング特約2

はじめに

前回に続き、ハウスクリーニング特約について、

実際に裁判ではどのような判決が下されているのでしょうか。

そこで、調べてみました。

東京地判平成25年7月18日

本判決についても、私Hayatoが、以降の章で、個人的に判決文について抜粋・整理してみました。

この事案も同様に、賃貸人と賃借人がハウスクリーニング特約について争いました。

賃貸人が支出したハウスクリーニング費用は5万7750円でした。

なお、賃料は月額13万4000円でした。

判決

  • 賃貸人の請求を棄却する

など、でした。

裁判所の判断

  • 本件賃貸借契約の契約書において、特約事項として、以下の記載がある。

2.退室時の貸主指定の専門業者によるハウスクリーニング代は借主が負担するものとする。(冷暖房等の設備も含む)

3.タバコのヤニや焼き焦げによる壁紙・床材等の汚損や既存の原状回復費用は借主が負担するものとする。

・・・

また、東京都賃貸住宅紛争防止条例に基づく説明書(以下「本件説明書」)では、

「当該契約における借主の負担内容について」との欄に、上記と同様の記載があることに続けて、以下の記載がある。

本契約では、借主の負担は原則通りです。すなわち、経年変化及び通常の使用による住宅の損耗等の復旧については、借主はその費用を負担しませんが、退去の時、借主の故意・過失や通常の使用方法に反する使用など、借主の故意・過失や通常の使用方法に反する使用など、借主の責めに帰すべき事由による住宅の損耗等があれば、その復旧費用を負担することになります。

  • 以上によると、上記契約書の特約事項によっては、負担すべきハウスクリーニングや原状回復の範囲等について包括的に定めるにとどまり、その範囲が具体的に明らかにされておらず、これが通常損耗を含む趣旨であることが一義的に明白であるとはいえず、賃借人が補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が具体的に明記されているとはいえない
  • また、本件説明書中の上記記載によると、むしろ賃借人の故意又は過失によらない損耗等に係る賃借人の費用負担を明示的に否定しているといえる。そして、賃貸借契約の終了に伴う賃借物件の返還時の清掃は原状回復の一種というべきところ、本件特約に係る本件説明書における上記記載によっては、通常損耗補修特約が具体的に明記されているものとは認められないし、・・・。
  • したがって、通常損耗特約が成立したということはできないというべきである。

個人的な見解

本判例についての個人的な見解です。

  1. 退去時のハウスクリーニング代を貸主から請求され、上記記載の文言を根拠にされると、
    それが、借主としては、普通に読めば、承諾せざるをえないような記載内容であっても、
    通常損耗を含む趣旨が一義的に明白でなければ、通常損耗補修特約が不成立である場合もありうる。
  2. 「一般原則に反するが、経年変化及び通常の使用による損耗の復旧も含む」趣旨の記載があれば、特約が成立していたかもしれない。
    もっというと、本件説明書の「本契約では、借主の負担は原則通りです。」の前に、”上記以外については”という文言を添えるだけで、異なる判決になったかもしれない。。。