【第52回】第1準備書面を作成する(2)

はじめに

被告らから追加の準備書面が期限になっても送付されて来なかったこと、また、被告らの準備書面(1)に対して原告からの認否・反論を書面にて行うため、準備書面を作成し、送付することにしました。

その内容について記載します。第1回からの続きです。

準備書面はFAXにて、裁判所と被告ら代理人に送付しました。

第1準備書面の内容

第1準備書面の内容の続きは以下の通りです。

2 「第2 内容証明郵便の送付に要した費用」について
第1文については、被告らが「否認ないし争う」点は、原告も否認ないし争う。内容証明郵便の費用については、原告が証拠として提出した領収証及び書留郵便物受領証(甲7の1から4)の通り。
なお、「賃貸借契約における敷金返還に関する貸主の一般的義務(甲1の1・第8条)」と記載されているが、括弧内について正しくは「甲1の1・第6条」と思われるため、被告らに訂正を求める。
第2文については、否認ないし争う。追って詳細に反論する。
3 「第3 精神的損害」について
否認ないし争う。追って詳細に反論する。
4 「第4」について
争う。

第3 「第2 被告の主張」に対する認否、反論
 1 「本件賃貸借契約について」について
(1) (1)について
第1文及び第2文については、前述の通り。
第3文についてはその趣旨が不明であるが、本件賃貸借契約に関する契約については原告及び訴外■■が行い、解約については、原告から訴外■■へ解約する旨を連絡した後に、原告にて被告管理会社に対して解約の手続きを行った。
(2) (2)について
第1文について、貸室賃貸借契約書、本件説明書及び退去時の住宅補修査定基準が合綴されており、貸主及び訴外■■が契印していることは認めるが、(もう一人の借主である)原告による契印は否認する。
第2文については、否認ないし争う。
第3文については、前述の通り。

第4 求釈明
被告らに対して、以下の事項を明らかにするよう求める。
1 被告らの準備書面(1)中、「第2 被告の主張」の「2 本件建物の原状回復費用について」の(2)の第4文の括弧内の「ただし、「キッチン床上張り材工共」については、甲2の3」については、記載内容が不明瞭のため明らかにするよう求める。
2 原告に対する敷金返還債務を負う者は誰か。(被告らの追加書面にて明らかにする事項となってはいるが、念のため本書面でも求める。)

第5 原告の主張
 1 本件特約による合意が成立していない点について1
本件物件の契約に先立ってあるいは契約締結時に、本件特約を記載した本件説明書(乙4)について原告は説明を受けていない。
先述のとおり、本件説明書については、原告本人は、賃貸仲介業者が署名押印箇所について分かりやすく記した目印に沿って、本件説明書の署名箇所に署名をしただけであって、少なくとも、被告オーナー会社(又は賃貸仲介業者等)から本件説明書の内容について説明を受けたことはないし、電話等で話をしながら説明を受けたこともない。
よって、「賃借人に予期しない特別の負担を課すことになる」(最判平成17年12月16日)特約に関して、原告がそれによる義務負担を意思表示しているとはいえないし、「その旨の特約が明確に合意されている」(同最判)ともいえない。したがって、本件特約による合意が成立しているとはいえない。

2 本件特約による合意が成立していない点について2
訴状にて述べた通り、本件説明書の本件特約の記載文言では、「賃借人が負担補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が」「具体的に明記されてい」(同最判)ないし、通常損耗を含む趣旨やその範囲が一義的に明白でないことからも、本件特約による合意が成立しているとはいえない。
さらに、本件説明書の本件特約の【2】[1]「室内全体のハウスクリーニング(自然損耗・通常使用による部分も含む)」(以下「クリーニング特約」という。)については、以下の点からも、合意が成立しているとはいえない。
(1) そもそも賃借人に費用負担を課することが明確に認識できない。
「ハウスクリーニング」という文言にとどまっており、賃借人が費用を負担することが明確に認識できないし、賃借人に負担を課する条件も明白でない。
「専門業者によるハウスクリーニング」あるいは「汚損の有無や汚損の程度によらない」といった記載やクリーニングの具体的な作業内容の記載があれば、賃借人がクリーニング費用を負担することを認識できる余地はあるが、本件特約の記載文言では、賃借人の費用負担を明確に認識できるとはいえない。
なお、原告から被告オーナー会社に送付した内容証明郵便(甲3の1)に記載の通り、退去時に、原告と同居人(原告の妻)の二人で丸1日かけて大掃除を実施済みである。
(2) 本件特約の【2】[2](3)「生活することによる汚損について、その復旧費用は賃借人と賃貸人とで2分の1ずつ負担すること。」と競合している。
本件特約における各条項にて、賃借人が負担する通常損耗の範囲が具体的に明記されていないがゆえに、「生活することによる汚損」をクリーニングにて補修する場合に、どちらの特約条項が適用されるのかが一義的に明白でない。
(3) そもそも退去時におけるハウスクリーニングとの記載がない。
[2]については、「退去時における住宅の損耗等の復旧について」と記載されているが、それに対してクリーニング特約は、退去時との記載はない。被告らとやり取りした書面に記載されている通り、入居時から汚損があったのであるから、そのクリーニングは入居者の負担、とも読み取れることから、退去時における特約であることも一義的に明白ではない。
よって上記の点からも特約による合意が成立しているとはいえない。

以上