はじめに
敷金返還請求事件の控訴審において、先日、裁判所から判決文が送付されてきました。
今回はその内容について記載しようと思います。控訴人が賃貸人で、被控訴人が賃借人です。
裁判所の判決文(1)
令和4年■■号 敷金返還等請求控訴事件
(原審・東京簡易裁判所令和3年第■■号)
口頭弁論終結日 令和4年■月■日
判決
主文
1 原判決主文第1項を次のとおり変更する。
(1)控訴人は、被控訴人に対し、■■円及びこれに対する令和3年■月■日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。
(2)被控訴人のその余の請求を棄却する。
2 控訴費用は、第一、二審を通じてこれを■分し、その■を控訴人の負担とし、その余を被控訴人の負担とする。
3 この判決は、第1項(1)に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人の請求をいずれも棄却する。
第2 事案の概要
本件は、控訴人又は■■株式会社(以下「管理会社」という。)との間で建物の賃貸借契約を締結して、建物を賃借し、同契約の終了に伴って、同建物を明け渡した被控訴人が、①主位的に控訴人に対し、予備的に管理会社に対し、敷金契約に基づき、未返還の敷金残額■■円、②主位的に控訴人に対し、予備的に管理会社に対し、債務不履行に基づく損害賠償として合計■円、③控訴人及び管理会社それぞれに対し不法行為に基づく損害賠償として慰謝料各■円の支払を求めたほか、上記①ないし③それぞれについて、訴状送達の日の翌日である令和3年■月■日から支払済みまで年3%の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
原審は、被控訴人の請求のうち、控訴人に対する上記①の■円及びこれに対する令和3年■月■日から支払済みまで年3%の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容し、控訴人に対するその余の請求及び管理会社に対する請求をいずれも棄却したのに対し、控訴人がこれを不服として、控訴を提起した。したがって、被控訴人の請求のうち、上記②③の請求及びこれらに対する遅延損害金の請求については、当審における審理判断の対象ではない。
1 前提事実(争いのない事実以外は、各項掲記の証拠又は弁論の全趣旨により認める。)
(1)控訴人と被控訴人及び●●株式会社(以下「●●」という。)は、平成19年■月■日、貸室賃貸借契約書(甲1の1。以下「本件契約書」という。)を作成して、控訴人を賃貸人、被控訴人及び●●(以下「被控訴人ら」という。)を賃借人として、東京都■■所在の建物(名称 ■■タワー)の■階■号室(以下「本件居室」という。)を次の約定で賃貸するとの契約(以下「本件契約」といい、本件契約に関する敷金についての契約を「本件敷金契約」という。)を締結し、上記同日ごろ、控訴人は、被控訴人らに対し、本件契約に基づいて本件建物を引き渡した。また、控訴人に対し、本件敷金契約に基づき、敷金■円が差し入れられた。(甲1の1、弁論の全趣旨)
ア 期間 平成19年■月■日から平成21年■月■日まで
イ 賃料月額 ■円
ウ 共益費月額 ■円
エ 敷金 ■円
オ 明渡しについての約定
(ア)被控訴人らは、本契約が終了する日までに(中略)本物件を明け渡さなければならない。この場合において、被控訴人らは、通常の使用に伴い生じた本物件の損耗を除き、本物件を現状回復しなければならない(本件契約書11条1項)。
(イ)控訴人、被控訴人らは、第1項後段の規定に基づき被控訴人らが行う現状回復の内容・方法及び費用の負担については、控訴人の定める「退去時の住宅補修査定基準」(乙1。以下「本件査定基準」という。)によるものとする(本件契約書11条3項)。
(2)●●は、本件契約の際、下記の記載がある「賃貸住宅紛争防止条例に基づく説明書」(以下「本件説明書」といい、下記の特約について「本件特約」という。)を受領し、これに記名押印した。
記
本契約では、特約として以下のことを賃借人の負担で行うことにしています。
[1] 室内全体のハウスクリーニング(自然損耗・通常使用による部分も含む)
[2] 退去時における住宅の損耗等の復旧について
(1)賃借人の責めに帰すべき事由による汚損又は破損について、その復旧費用は賃借人の負担とすること。
(2)賃借人が居住中特殊な仕上げを行った場合等について、その復旧費用は賃借人の負担とすること
(3)生活することによる汚損について、その復旧費用は賃借人と賃貸人とで2分の1ずつ負担すること
(3)控訴人と被控訴人らは、平成21年■月■日以降、従前と同一の条件で、本件契約を更新した(なお、控訴人ら及び管理会社は、平成28年■月頃、本件契約につき、形式的に、控訴人を賃貸人、管理会社を賃借人、被控訴人らを転借人とすることを合意した。)。(甲2の1・2、弁論の全趣旨)
(4)被控訴人らは、令和3年■月■日に、控訴人に対して、本件居室を明け渡し、同月■日、本件契約は終了した。
(5)住宅管理業者である管理会社は、被控訴人らが退去した後、本件居室内の損傷状況の損傷状況を調査し、その結果に基づき、令和3年■月■日付で、「現状回復工事御見積書」(甲2の3。以下「本件見積書」という。)を作成し、被控訴人に交付した(甲2の3、乙2、6及び弁論の全趣旨)。
(6)控訴人は、同年■月■日、被控訴人に対し、敷金■円の一部の返還として、■円を交付した。
((2)へ続く)